マーケティングはすべての人にかかわる学問

 

マーケティングを学ぶことで見えてくるものとは

マーケティングを学ぶことなく社会人になる人は少なくありません。しかし、学ばずに過ごすのは残念なことかもしれません。それほどマーケティングは汎用性の高い学問で、我々の回りには、マーケティングで新たな価値を見いだせる事象が溢れていると永島先生は語ります。

「私は高知に来て3年になりますが、高知の産品は他県の人から見れば、どれもクオリティが高く素晴らしい価値のあるものばかりです。ただ、その価値を、誰に対して、どのように訴求していくか、という明確なマーケティング戦略がないことが多いのが残念です。できるだけ多くの方にマーケティングの重要性を理解していただき、自社の素晴らしい商品価値を、ターゲット顧客を定めて、正しく訴求していくことによって、収益につなげていただきたいと思っています。学生の就職活動も同じで、自分という商品価値を、どの企業に、どうやって売り込んでいくかを考える過程もマーケティングといえます。さらに、店舗等でのアルバイトやパートタイムの仕事においても、与えられた仕事だけでなく、顧客のニーズをうまく捉え、その顧客満足のために、新たな商品やサービスの案を提示することで、より価値の高い仕事をすることができます。それもすべてマーケティングの考え方が基本にあります。」

永島先生によると、「マーケティングとは、顧客の立場に立って、顧客の満足する価値を提供するプロセスです。そのために、まずなすべきことは顧客のニーズを掴むこと。そして、顧客満足を満たすために他社には提供できない自社のもつ資産の優位性を知ること。この両者を適合させることによって、顧客満足をもたらす価値を提供することが可能となります。言葉にすると簡単ですが、それを自分の会社に置き換えると、そう簡単に実践できるものではありません。さまざまな事例を学び、戦略的なものの考え方を体系的に整理し、鍛えていくことで、世の中への関わり方が見えてくるようになります。」


学位:経営学修士/Ph.D.

 

ニーズの先読みと突き抜けた発想力のある人材

かつて隆盛を誇った日本企業が次々と厳しい局面を迎え、名門ブランド、大手企業の衰退がメディアを賑わせる、世はまさに不確実性の時代。このような時代に求められるのはどのような人材なのでしょうか。

「不確実性の高いビジネス環境にあって、企業は、市場との距離を縮める努力を強く求められます。つまり市場の動きを絶えずウォッチする、市場志向の戦略が強く要求されます。

市場志向の戦略においては、見えないニーズを先読みすることが重要です。今の時代の生活を研究しながら、次の時代の商品はどうあるべきかを発想できる力を持つことが大切です。iPhoneが世界を席巻したことは記憶に新しいですが、日本のメーカーは、自社の事業領域に関しては性能の高い商品づくりを得意とするものの、自分の事業枠を取り除き、i Phoneのように、消費者にとって突き抜けた商品を開発することは不得手です。

そういう意味で、専門性にとらわれず、市場のニーズを先読みしていく力というのは大事だと思うのです。そのためには、まずは自身の専門性を深めながら、一方で専門性にとらわれない、幅広い視野をもつT字型の人材が、これからの時代、よりいっそう求められるのではないでしょうか」。

永島先生はマーケティングを学びたい方に対して、次のような方法で思考を鍛えることを勧めています。「たとえば、コンビニで販売しているペットボトルの「お茶」。容量は同じなにの1つは100円、もうひとつは150円。これが同じように売れているのはなぜなのかを考えてみる、というようなことです。このように、身近な事象から小さなテーマを見つけ、それを掘り下げて考えることで新たな気づきを得る。この積み重ねが専門性を深めるのに役立ちます。さらに、年々落ち込んでいるお茶という産業を、コーヒーや紅茶の嗜好飲料と戦いながら、新たに興していくための施策を考えることで、より幅広い視野で物事を捉えることができます。このように身近な事象を観察することで、深い専門知識と幅広い視野の両方を獲得することが可能となり、それが豊かな発想力を育てる土壌とつながっていきます。」

 

実務と研究の融合を実践

永島先生は、パナソニックで30年間国際マーケティングに携わってこられ(内17年間はフランスでの海外勤務)、その間、神戸大学大学院経営学研究科でMBAを取得、ソルボンヌ大学大学院ビジネススクールでPh.D.を取得するなど、実務の傍ら研究に勤しみ、その成果を実務に生かすことにより、実務と研究の融合を実践してきました。

「パナソニック時代、どんなに良いマーケティング戦略を立てても期待した成果の出ないことがあり、それは何故かということを考えた時、「戦略とプロセスの一体化」という課題が浮かびあがってきました。事業戦略を支えるのは、商品の需要を創造するマーケティング部門と、製造、流通など供給を担うオペレーション部門です。新しい商品が発売され、誰にどうやって訴求していくかという戦略をマーケティング部門が考えます。しかし、どんなに優れた戦略を立てても、オペレーション部門と連携して、その実践が可能なプロセスを構築していなければ、必要な時に、必要な商品を消費者に届けることができません。すなわち、マーケティング戦略とオペレーション・プロセスとの一体化が重要なのです。そこでこれらを実践するために、「製品特性」「製品のライフサイクル」「流通パートナー」「協業レベル」という4つの要素をどのような時系列で組み合わせると成果が出るのかを研究し、適切なコラボレーションを通じて成果につなげるAdaptive Collaboration Strategy理論を構築しました。この理論はフランスのデジタルカメラ市場で実践され、成功を収めています。マーケティング、流通、製造が連携して動く新たな仕組みをつくり上げた結果、大幅な事業拡大につなげることができたのです。」こうした事例をまとめた永島先生の研究論文は、世界の著名なジャーナルで複数掲載され、高い評価を得ています。加えて、今年の2月にそれらの論文をまとめ『Adaptive Collaboration Strategy -A case study of a French-Japanese supply chain in consumer electronics products -』という本(電子書籍)を出版されました。

本の詳細はこちら

「世の中には、マーケティング戦略とそれを支えるオペレーション・プロセスの連携がうまくいっていないために、成果が出ない例があまた存在します。私の研究は、さまざまな業種において、どうやってこれらを一体化し、どの要素をどのように組み合わせると成果が出るのかということについて、実践的な研究・提案を行っています」。

 

社会人のための大学院について

今の時代においても、「マーケティング理論など必要ない、経験と勘で実践あるのみ」といった考え方が根強く存在しています。実務家でありながら、学問の道に進まれた永島先生にとって起業マネジメントコースのメリットとは何でしょう。

「今、行政や企業で勤務されている方々は、日本を取り巻く環境の劇的変化の中で、過去の経験や現場の実務知識の集積だけでは解決できない高度で複雑な課題に直面していると思います。加えて、組織は益々フラットになり、横に寄り添ってサポートしてくれる先輩や上司も少なくなっています。こうした中で、高度で複雑な課題を一人で解決するのは大変難しいと思います。失敗の積み重ねによって成長するというやり方もありますが、時間やコストがかかります。できるだけ大きな失敗を減らし、効率よく課題解決を考える場として本学大学院での学びを活用していただければと思います」。

 

 

 

教員紹介インタビュー